懐かしい電話

携帯がなり、着信表示を見ると
見慣れない番号が・・・。
一瞬迷いましたが、出てみました。
「もしもし」と向こうから、
もつれた声。
何処かで聞いたことがあります。
「ぼく、○○です。」
その、発音の不明瞭さで、思い出しました。
私が5年前まで働いていた、
障がい者リハビリテーションセンターに
入所していた脳性まひの方でした。

「わぁ、なつかしい。お元気でしたか。」
と声をかけると、もう向こうは
何を言っているのか、わからない嬉しそうな声。
緊張したり、感情の起伏が大きいと、
発話が出来なくなる方なので、
会話も十分に出来ない状態でしたが、
十分に気持ちが伝わってきました。

ゆっくり聞くと、
昔の着信履歴があったので、
かけてくれたとのこと。
新しい施設に変わったのだとのこと。
一緒にいた仲間の方は、お亡くなりになったとのこと。
でも、まだ、あの頃の仲間が二人そばにいるとのこと。

・・・懐かしい日々が思い出されました。
電動車いすサッカーというスポーツに、
みんなで興じていた頃。
大阪大会に行った時には、駅がバリアフリーではなく、
みんなで電動車いすを担いだこと。
入所している施設では、夜勤の時に語り合ったこと。
大変で、暖かくて、楽しくて、辛くて、
泣いたり、笑ったり。

人ってなんだろう、
幸せってなんだろうって
いつも、いつも、考えさせられました。

電話を切る前に、彼がいいました。
「ありがとうございました。」

いいえ、私のほうこそ。
沢山の大切な事を教わりました。
沢山の幸せな時間を頂きました。
そして、今の私があるのです。

どうぞ、お元気で。
本当に、お元気で。